0538 第1回忍者トレイルランニングレース

▲2017(平成29)年11月3日(金・文化の日) 晴

 「忍者」という呼称は、昭和30年代に小説などで使われ、定着してきたもので、歴史的には「忍び」と呼ばれてきました。
 黒装束で素早く動き回り、手裏剣を投げて敵を倒す、というのも後から生まれたイメージだそうです。実際の忍者は地味な服に身を包み、人混みに紛れ、主君のために敵方の情報収集を行っていました。
 伊賀は戦国時代、地元の土豪が忍術を発展させ、甲賀とともに「忍びの里」として知られています。

 伊賀の地は、起伏の激しい道が続き、忍者が駆け抜けたであろう山々が連なります。この忍者の里山を舞台に、心技体の修行道を体現できるのが「忍者トレイルランニングレース」です。

 秋天一碧。
 伊賀市さるびの温泉には、18kmのショートコース、ファミリーコースの参加者が集まっていました。
 エントリーは、
 ショートコース男子の部 227名
 ショートコース女子の部  83名
 合計          310名
 ファミリーの部      65名
 大きな大会ではありませんが、会場に広さやトレイルコースの状況を勘案すれば適当な規模でしょう。

 9時45分、開会式。来賓の伊賀市長は忍者の衣装であいさつ。忍びの国、忍者の里をPRされていました。
 10時スタート。ボルボカーが先導するとのこと。
 「ボルボじゃなくて、ボロボロカーだよ」
 参加者からそんな声が漏れてきました。年配の方でしょう。私も御多分に漏れませんが。

 舗装道路を約2km走って西教山への登山道に入ります。なんとか走ることができたのは最初の2、3百メートルのみ。急勾配の坂道になり、やがて一歩一歩脚を持ち上げるようなシングルトラックの登山道になります。

 私の前はなぜが女性ばかりが3、4名。女性参加者は4分の1くらいですから、不思議です。

 森の中は先だっての台風21号と22号の影響でしょうか、木が倒れ、枝や葉が散乱しています。

 コースには協賛団体の広告入りの白いテープや黒で「NINJA TRAILRUN」と書かれた標識でマーキングされています。間違えやすい箇所では白テープが長く張られています。山の中にこのようなマーキングを施すのは、大変労力のかかる作業に違いありません。スタッフの方々の苦労に敬意を表したいものです。
 また、赤いTシャツのスタッフが要所要所で立哨して、「ナイスラン!」「あと3kmでエイドです!」「頑張れ!」と声をかけてくださり、スイーパーの方が走りながら激励をしてくれます。通常のマラソンのように沿道の声援がない分、選手の支えになりますね。

 コース最高地点、682mの西教山の頂上を越えると、しばらくアップダウンを繰り返し、走ることができる箇所も出てきます。
 「あれ? さっきまで6kmだったのに3kmになっちゃった。GPSがおかしいよ」
 前の女性ランナーからの声です。
 山の中では上手く作動しないこともあるのでしょう。
 私のEPSON WristableGPSはちゃんと距離を刻んでいます。ただ、高低差の大きいコースを走ると距離は短く計測されるのでしょうか。今日のコースは18kmということですが、私のGPSでは16.6kmでした。

 スタートから1時間20分を経過した頃、トップランナーとすれ違いました。こちらはまだ中間点にも行っていないのに、速いですね。

 「階段を下りるとエイドです。滑るので気をつけて降りてください」
 ようやく8km地点、ウォーターステイションに辿り着きました。
 「トイレはないですよね」
 「この道のコーナーを曲がってください。誰も来ませんから」
 言われたコーナーに行くとエイドステーションから隠れて見えません。側溝に用を足しました。自然を汚してすいません。

 持参したコップに水をもらい、喉を潤しました。
 東海自然歩道の階段を駆け上ると、忍者の出で立ちのスタッフがハイタッチで選手を迎えてくれました。
 分岐を左に折れると、田代池が見えました。森の中から出て、パッと明るくなりました。木の葉や軟らかい土がクッションになって脚に優しいコースです。水溜まりやぬかるみもありますが、平坦で気持ちよく走れます。
 「人工池ですけど、紅葉が始まっています」
 湖畔で写真を撮っていた男性が教えてくれました。綺麗です。

 「9.5km地点です。あと8.5kmです。頑張ってください」
 分岐点で立哨をしているスタッフの声です。
 ようやく半分は過ぎました。
 「この先も上りです」
 そうか、まだまだきつい道が続くのか。
 ハァーハァーと音が出るほど呼吸が荒くなり、脚も徐々に上がらなくなります。ランニングできる区間はほとんどなく、時に木に捕まりながらよじ登る状態です。

 なんとか先ほどの田代池への分岐点に戻り、左に進路を取ります。往路で走った道がそのまま復路になります。
 ウォーターステイションに戻ってきました。
 コップを取り出し、給水します。
 「かわいらしいコップですね」
 「子どもが小学生の時使っていたやつですから」
  菓子パンも一切れもらいました。

 残り5km。
 トップ選手とすれ違った道をしばらく走ると、スタッフが左の道に行くよう案内しました。
 「ゴールまでほとんど下りです」
 往路とは別の道です。
 後にいた女性ランナーが「こんな道、通たっけ?」と言っていましたが、コース図を見ていないのでしょう。

 階段はほぼウォーキングです。上位のランナーはこんな階段も走って下るのでしょうが、私は膝を痛めてしまうので、慎重に行きます。
 3人ぐらいの女性ランナーに追い抜かれました。ウーマンパワーはすごいですね。こういうタフなコースは女性の方が強いです。

 深い森の中で薄暗くなり、渓流が現れました。
 今度は沢渡りです。何度も沢を横切りました。バランスを取りながら渓流の中に置かれた石を踏み渡るのです。
 なんと地形の変化に富んだトレイルでしょう。しんどいけど、面白い、楽しい。

 「すいません。写真撮ってもらえませんか」
 前を走っていた女性ランナーに声をかけられました。
 「いいですよ」
 スマホのシャッターを押してあげました。
 確かに写真に残しておきたいような幻想的な自然の空間です。
 「呼び止めてすいません」
 「いえいえ、急いでないですから」
 「写真、撮らなくていいですか」
 「いえ、私はいいです」

 渓流を離れると舗装道路に出ました。行きに走った道です。
 残り1km弱。時計の表示は2時間55分。3時間切りはちょっと難しいかな。それでも、最初から3時間以上かかると思っていたので、納得のタイムです。
 前方に女性ランナーが3人。今日は本当に女性に縁があります。
 ゴール直前の坂。女性ランナーは皆、歩き出しました。3人をかわして、さるびの温泉の敷地内へ。忍者姿のスタッフに出迎えられて、ゴール。
 疲れましたが、自然と格闘し、自然を満喫できた、最高に楽しい忍者修行でした。

種目:ショートコース男子の部
距離:18km
順位:153位/227人中(エントリー数)
年代別順位(50歳以上男子):52位/75人(エントリー数)
記録:3時間00分30秒
使用シューズ:asics GEL-Fuji

追記①
 大会会場で三重交通のJALラッピングバス運行開始式が行われました。
 名古屋・伊賀上野間の定期高速バスの車体に、アイドルグループ「嵐」の5人のメンバーが大きく描かれています。
 そのバスの前で、JALのキャビンアテンダントと写真を撮ってもらいました。綺麗な女性一緒で嬉しい限りです。

追記②
 帰り道、国道23号町屋大橋南詰にある「立ち食いうどん 川越屋」に入店してみました。
 以前、義理の弟(私の妹の夫、私より年上ですが)から、美味しい店だと教えてもらったのですが、なかなか立ち寄る機会がなかったのです。
 表の看板は崩れ落ち、枠組みだけになっています。一見すると、廃業してるのかなと思ってしまいました。駐車場に車が3台停めてあったので、ああ、やってるんだなとわかるような古い店です。
 立ち食いと言っても3脚のテーブルがあり、6人の先客がいました。
 木製のメニュー板も、椅子もテーブルも、全てに年季が入った、昭和レトロな店内です。
 お爺さんが一人で切り盛りしていました。
 きつねうどん(500円)を注文。代金引換で注文の品をもらい、器も自分で返却するセルフサービスです。
 ツルツルとした柔らかめの麺と関西風の出汁で、とても美味しかったです。