◆2020(令和2)年6月25日(木) 雨
その昔、愛知県には「ツノダ」という自転車メーカーがありました。私と同世代以上の方なら、「つんつんツノダのTU(テーユー)号」というテレビコマーシャルをご存じの方もいるでしょう。
今、ツノダは自転車製造からは完全に撤退し、かつての工場跡地を利用した倉庫業を生業とする会社となってしまいました。
ミヤタは、1890年(明治23年)に国産自転車第1号を製作した日本の老舗自転車メーカーです。マウンテンバイクブームの頃、私はミヤタのリッジ・ランナー(RIDGE-RUNNER)に乗っていました。当時、革新的な接着技術を駆使したフレームで、とても魅力的なマウンテンバイクでした。
今、ミヤタは自転車店から姿を消してしまいました。ミヤタサイクルとして会社はありますが、自社ブランド品は委託生産となり、台湾のメリダの代理店のような感じで、自ら製造はほとんどしていないように思います。
かつて日本は、世界一の自転車生産国になったこともある国でした。
1970年(昭和45年)前後の数年間は、自転車生産大国アメリカを抑えて、世界一の自転車・自転車部品の輸出国でした。
パナソニックは、1990年から1992年までツール・ド・フランスに出場したオランダのプロチームのスポンサーとなり、フレームなど機材を供給していました。ツール・ド・フランスを走った唯一の日本メーカーです。(私がパナソニックのクロモリとチタンのロードバイクを持っているの理由の一つです。)
今のトヨタやホンダなどの自動車と同じように、日本製自転車が世界中で走っていた時代があったのです。
21世紀の今、アメリカも、ヨーロッパも、そして日本も、自転車産業は衰退してしまいました。
おそらく、日本のメーカーとしては、シマノだけが世界中にコンポーネンツを供給しているだけだと思います。
自転車は、各部品の規格がほぼ統一され、互換性があるため、フレームに各社のパーツを組み合わせるだけですから、どのメーカーが作っても完成形が似通ってきます。こうした産業をモジュール型といいます。これに対し、部品と完成品の機能が独立せずに複雑な調整や擦り合わせで完成品となるのを、インテグラル型というそうです。自動車の場合は後者になり、エンジンの機能や性能で他のメーカーと競争していくことが可能です。
現在、自転車の主要パーツは、シマノ、カンパニョーロ、スラムの3社に概ね集約されています。
自転車メーカーが独自色を出せるのはフレームぐらいです。そのフレームもほぼダイヤモンド型に決まっていて、素材、細部の処理の仕方や塗装、デザイン、ロゴによって違いを出すしかありません。
そうした中で、台湾はモジュール化された自転車産業の強大な統合プラットフォームとして業界の覇権を握って、世界中のブランドの受け皿になっており、「made in Taiwan」は間違いのない品質として認められる存在となっています。そして、中国などのアジア諸国がコスト戦略でその後を追随している形になっています。
こうなってきますと、「made in 何々国」を気にする必要はない、気にしても仕方がないと言えるかもしれません。品質や性能の善し悪しで判断するしかないと思います。スウェーデンの自動車会社VOLVO(ボルボ)も、中国・吉利汽車の浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ)の傘下となり中国生産となったくらいですから。
しかし、それでも私は「made in Japan」にこだわり、日本製自転車の再興を願っています。
60代の私ですので、この先、新しい自転車購入するかどうかわかりませんが、もし購入する機会があったとしたら、やはり日本製自転車を探して購入することになるでしょう。