0855 厚底シューズの是非

◆2020(令和2)年2月25日(火) 晴

 世界の長距離界を席巻するナイキの厚底シューズ。マラソンの世界記録や日本記録の更新、箱根駅伝などでの好記録の連発で、注目を集めています。
 厚底に埋め込んだ炭素繊維のプレートの弾力を推進力に変えることで、クッション性と反発性の両立を実現しました。

 ワールドアスレティックス(World Athletics、『世界陸連』)は、1月31日、シューズに関する新ルールを発表しました。4月30日以降は新ルールが適用されることになりました。

新ルールの概要
1 靴底の厚さは4センチ以下
2 靴底に埋め込むプレートは1枚まで
3 スパイク付きの靴底は厚さ3センチ以下
4 違反が疑われる場合、審判は選手に検査のため靴を提出するよう要求できる
5 2020年4月30日以降の大会では、4か月以上前から市販されているものでなくてはならない(医学的理由などでカスタマイズされたものは認められる)

 ナイキの「ヴェイバーフライ」など、既に市販されているモデルは条件をクリアし、着用できることとなりました。ナイキは世界陸連のお達しから3週間後の2月21日に、新モデル「エアズーム アルファフライ ネクスト %」を3月1日から販売すると発表しました。これを購入するには、過去2年間のマラソンで、男子は2時間50分、女子は3時間40分以内で完走した実績が必要となるそうです。

 一番大きな影響は、5番目のレースの4か月前から一般購入できるモデルであることです。
 アシックスやミズノ、アディダスニューバランスなどのメーカーは選手個々の要望を反映した特注シューズを提供してきましたが、4月30日以降は医学的理由がないと、カスタマイズしたモデルは使用できなくなります。東京オリンピックから逆算すると、3月下旬から4月上旬に一般発売しなければなりません。

 世界陸連は、なぜ厚底シューズをきっかけにこのような規制をしたのでしょうか。
 世界陸連の会長は「靴が不公平な助力や利益を生まないようにし、競技を守ることが責務だ」と言います。
 果たしてそうでしょうか。

 技術や機能は日々進歩しています。シューズも例外ではありません。
 例えば、自転車競技では、フレームもパーツもすごく進化しています。
 私がスポーツバイクを始めた1980年代後半、変速機は8速×2速の16段でしたが、今は11速×2速の22段、フレームもクロモリからアルミ、そしてカーボンと軽量化されています。
 パラリンピックの義足にしても、マラソン用の車椅子にしても、驚異的な進化があります。
 しかし、どんなに機材が進化しようとも、それを生かすも殺すも、それを使用する人間自身のパワー、テクニック、スピードによります。

 ナイキの研究者は、トップ選手には軽量薄底シューズという固定概念を覆して厚底シューズを開発したわけです。発想の転換、着眼力は素晴らしいと思います。

 電動アシスト自転車パワースーツのように動力を使ってサポートしない限り、厚さが5センチになろうが、カーボンプレートを何枚使おうが、バネを使おうが、自由ではないでしょうか。
 それを生かすのは本人の実力次第です。
 靴の推進力を引き出せる下半身の筋力が備わって、うまく使いこなせる人はタイムが上がるわけです。

 研究者が、制約や制限なく、自由な発想で開発できるのが本来の姿であると思います。